日本のAI国家戦略

日本のAI国家戦略は、大きな岐路に立たされている。基盤技術の開発競争で米中に後れを取り、国内での社会実装も思うように進まない。この課題の根源は、技術力そのものよりも、むしろ国家としての制度設計と連携体制の弱さにあるのではないか。

その問題を象徴するのが、日本経済新聞(2025年3月10日)「生成AIで広がる国際格差」で指摘されている状況である。海外製AIへの依存が続くなか、「国産AIの育成が急務」という掛け声とは裏腹に、産業界の投資は依然として慎重なままである。これは、個々の企業の努力だけでは国全体の潮流を生み出せない現実を示している。

一方、BBC News Japan(2025年4月2日)は、“South Korea invests in AI sovereignty” の見出しで韓国の国家ぐるみの取り組みを伝えている。韓国は「AI主権」を明確に掲げ、AIを安全保障と経済成長の核と位置づけている。政府と民間が連携し、AIチップから大規模言語モデル、人材育成までを一気通貫で支援する体制は、日本の現状とは対照的だ。

結論は明快である。日本に今必要なのは、個別的な「点の努力」を称賛し合うことではない。産官学の知見とリソースを結集し、国全体の「AI国力」へと転換させる戦略的な仕組み、すなわち「使いこなすための社会システム」の構築である。それができなければ、次の10年で日本はAI先進国との差を決定的に広げられることになるだろう。

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