- 問いと立場
問いは「ロボットに税金をかけるべきか」です。
私は条件つきで賛成です。理由は、①ロボットの導入で仕事が変わる人を支える資金を作れる、②人の給料にだけ重い負担がかかる今の制度を少し公平にできる、③税の仕組みを工夫すれば技術投資を止めずにすむ、の3点です。
- 「ロボット」の意味と対象
ここでいうロボットは、工場で動く機械だけでなく、AIやセンサーを使って自動で判断・作業するシステム全体を指します(経済産業省, 2024)。
税金をかける相手はロボットそのものではなく、「ロボット導入で増えたもうけ(超過利益)」の部分です。
すでに法人税がかかっているため、二重課税にならないよう控除や上限を設定する必要があります。
- 論点の整理
①仕事と給料
短期的には、人の仕事がロボットに置きかわることで給料が下がる人もいます。
しかし長期的には、新しい仕事(AIの整備、データ分析など)も生まれます。
FreyとOsborne(2017)は、全体の約47%の仕事が自動化の影響を受ける可能性を指摘しています。
だからこそ、変化の途中で困る人を支える制度が重要です。
②税の公平さ
いまは人の給料に社会保険料が重くかかる一方で、機械投資には減税措置が多くあります。
結果として、「人よりロボットの方が得」という構造が生まれています(OECD, 2023)。
負担のバランスをとるために、ロボットにも軽い税をかけることは公平性の面で意味があります。
③生産性と競争力
ロボットはミスを減らし、生産性を高めます。
しかし税率が高すぎると、企業の技術投資が止まり、社会全体の効率が下がるおそれがあります。
したがって、「軽い税率+限定期間」の仕組みが必要です。
- かんたんな数値例
たとえば、ある工場が1億円でロボットを導入し、人件費が2割減り、不良品が減って利益が年間1,800万円ふえたとします。
「ロボットで増えたもうけ」に2%の税をかけると、税額は年36万円です。
元を取るまでの期間は5.6年から5.8年に少しのびるだけで、企業の投資意欲はほとんど変わりません。
つまり、軽い税なら影響は小さいことがわかります。
- 反対意見とその答え
反対①「投資が減って外国に負ける」
税率を2%以内におさえ、期間を5年間に限定すれば影響は小さくできます。
さらに研究開発費や人材育成への減税を組み合わせれば、技術投資を続けられます(OECD, 2023)。
反対②「もうけを計れない」
導入前後のデータ(生産量、不良率、残業時間など)を比較し、透明な基準で算定すれば可能です。
政府や大学と連携して共通ルールを作ることが望まれます。
反対③「海外に工場が逃げる」
中小企業には年500万円まで非課税とするなど、段階的な制度にすればリスクを減らせます。
- 政策の選択肢と私の提案
案A:公平重視型
ロボット税を新設せず、社会保険料の一部を企業の「付加価値」全体にかけ、人と機械の負担をそろえる。
案B:限定課税型(私の提案)
ロボット導入で増えた利益の2%を、5年間だけ集める。
中小企業は非課税ラインを設定。
集めたお金は転職支援やリスキリング(学び直し)に使う。
技術投資は早期償却などで支援する。
案C:逆方向型
自動化投資を減税で後押ししつつ、利益の一部を社会に還元してもらう方式。
私は案Bを支持します。
なぜなら、働く人の再出発を助けながら、企業の技術発展も止めない「ちょうどよいバランス」があるからです。
- まとめ
ロボット課税を一律に重くすると、技術発展が止まり、社会全体の損になります。
しかし、軽い税率で、増えた利益の一部だけを、期間を決めて集めるなら、
そのお金を使って職業訓練や再教育を進められます。
人とロボットが共に生きる社会にするために、私は条件つきでロボット課税に賛成します。
参考文献
Frey, C. B. & Osborne, M. A. (2017). The Future of Employment: How Susceptible Are Jobs to Computerisation? Oxford University Press.
OECD (2023). Tax Policy and Automation: Balancing Innovation and Fairness. OECD Policy Papers.
経済産業省(2024)『AIとロボットがもたらす産業構造の変化』産業政策レポート.
