近年、中国政府は人工知能(AI)が国家の競争力を左右する最重要技術として位置づけら れている。2017 年に発表された「新世代人工知能発展計画」では、2030 年までに世界の AI 分野を主導する国家になることを目標として掲げた。この計画に基づき、政府は研究資 金の投入、人材育成、産業応用の推進などを体系的に行っている。人民網によれば、2024 年に中国の AI 産業規模は 7,000 億元を突破し、AI 関連の産業体系がほぼ完成したとされ ている。また、AI 分野の特許出願件数においても世界一となったと報じられている。
一方で、課題も少なくない。第一に、AI 分野の基礎研究や核心技術において、依然として 米国など先進国に依存している点である。第二に、AI 利用に伴う倫理的・社会的問題が指 摘されている。プライバシー侵害への懸念は国内外で議論を呼び、技術発展と人権保護の バランスが求められている。例えば、産経ニュースの指摘により、中国発の AI 技術や生成 AI サービスに対して、各国・地域の政府機関や企業が慎重な姿勢を強めている。職員によ る利用を制限する事例も増えており、データの取り扱いをめぐる国際的な警戒感が一層高 まっている。米国では、航空宇宙局(NASA)や海軍などの公的機関が、職員や軍関係者に 対して中国 AI サービスの利用を控えるよう指示している。イタリア政府は 1 月 30 日に国 内でディープシークの AI サービス利用を制限する方針を示し、台湾当局も翌 31 日、公的 機関職員による使用を禁止する措置を発表した。
AI 技術の発展は「両刃の剣」であり、生活の利便性を向上させる一方で、負の影響も生じ る。例えば、AI を介した世論の検閲や、政治的な理由で他国技術の導入を避けるといった ことは、現段階の AI 発展の阻害要因となっている。
要するに、中国の AI 国力は「量と速度」で世界をリードしつつあるが、「質と倫理」にお いては今後の課題を抱えている。国家主導の集中型モデルがどこまで国際的な信頼を得ら れるかが、今後の鍵となるだろう。AI は単なる技術ではなく、国家の価値観や社会構造を 映す鏡でもある。中国の AI 発展の方向性は、世界のテクノロジー秩序に大きな影響を及ぼ すと考えられる。
