2024年外交青書のワードクラウド

このワードクラウドは、2024年度外交青書の「情勢認識」部分から抽出した頻出語を視覚化したものです。図から「国際」「外交」「日本」「安全」「協力」「経済」などが際立ち、国際秩序の維持と平和の確保が最重要課題であることが分かります。特に安全保障や経済安全保障に関連する語が多く、地政学的リスクと相互依存への対応が強調されています。また、「グローバル」「サウス」などの語から、新興国との関係強化や多国間協力の必要性が示されています。さらに、気候変動や技術といった地球規模課題への対応も外交戦略の中核に位置づけられています。総じて、日本外交は価値観の共有と包摂的アプローチを軸に、分断を乗り越える方向性を打ち出しています。

図解:友達の祖母がTikTokのAI動画を誤信し虚偽記憶に至るフロー

【解説】本図は、友達の祖母という具体的事例をもとに、TikTokで拡散されたAI生成動画をきっかけに誤信が形成され、最終的に虚偽記憶へと至る心理過程を示している。家族が実演によってAI合成の仕組みを説明しても、反復視聴によって既視感や流暢性が高まり、記憶エラーが生じることで、自分の体験だと誤って想起しやすくなる。介入の要点は、再生停止や比較提示、時系列の確認を通じて段階的な再評価を促し、さらに推薦や通知の制御によって誤情報への接触を減らすことである。プラットフォームの警告は有効だが、家族の支援と併用することで初めて十分な効果を発揮する。

ロボット課税をどう考えるか:公平な負担と技術革新の両立

本稿の問いは「ロボットに税金をかけるべきか」である。筆者は条件付きで賛成の立場を取る。自動化がもたらす生産性向上は社会に利益をもたらすが、同時に雇用構造の変化と税収構造のゆがみを引き起こす。したがって、技術の発展を妨げずにその「副作用」を調整するための制度的工夫が必要である。ロボット課税は、技術の恩恵を公平に分配するための移行期的な政策ツールとして位置づけられるべきだと考える。

本稿でいう「ロボット」とは、産業用ロボットに限らず、AIや自動制御システムなど、人の判断や労働を部分的に代替する広義の自動化技術を含む。課税対象は、ロボット導入によって企業が得た超過的な利益である。Abbott ら(2018)は、現行の税制度が労働所得に偏っており、自動化が進むほど税基盤が縮小すると指摘している。よって、ロボット自体に直接課税するのではなく、導入効果によって増加した収益部分に限定して軽く課税する方式が現実的である。

自動化は短期的に人手を置き換えることで雇用を減少させるが、長期的には新しい職業を生み出す可能性もある。OECD(2023)は、自動化の影響を受けやすい職業が加盟国平均で約27%を占めると報告しており、とくに中・低技能労働者の再雇用が課題である。

Acemogluら(2020)は、米国の税制が資本投資を優遇する結果、企業が「人を雇うより機械を導入する方が得」と感じる構造になっていると指摘した。ロボット課税はこの歪みを緩和し、労働と資本の負担を中立化する手段となり得る。

Hötteら(2024)は、欧州19か国を対象とする研究で、自動化の初期段階(1995〜2007年)には税収が一時的に減少したが、その後は回復傾向を示したと述べている。短期的な財政悪化は過度に懸念すべきではなく、長期的には新たな税基盤が形成されると考えられる。

4. 簡単な数値例

自動化が雇用に与える影響を数量的にみると、その偏りが明確になる。以下の表は、OECDおよびPwCの研究結果をもとに、自動化のリスクと産業別の影響を整理したものである。

1 自動化(ロボット/AI)導入が労働雇用に与える主な影響

指標概要出典
高自動化リスク職の就業成長率高リスク職の就業成長率は約6%にとどまり、低リスク職(約18%)との差が拡大している。OECD(2021)『What happened to jobs at high risk of automation?』
自動化リスクのある職業の割合OECD加盟国平均で約27%の職業が「自動化の高リスク」に分類される。OECD(2023)『OECD Employment Outlook 2023』
イギリスにおける産業別リスク運輸・保管業で約56%、製造業・販売業で約40%前後の職が自動化の影響を受ける。PwC(2017)『Will Robots Steal Our Jobs?』

これらの数値から、自動化の影響は特定の産業に集中しており、とくに低技能労働者にとって深刻であることがわかる。したがって、ロボット課税で得られる財源を、再教育(リスキリング)や転職支援に充てることは社会的に合理的である。

5. 反対意見とその検討

一つ目の反対意見は「課税が企業投資を抑制し、国際競争力を損なう」というものである。これに対しては、税率を軽くし、対象を「超過利益」に限定することで影響を最小化できる。

 二つ目の懸念は「利益の測定が難しい」という点であるが、Abbottら(2018)が提案するように、生産性向上率やコスト削減額などの客観的指標をもとに算出すれば実務的に運用可能である。

 三つ目は「海外への生産拠点移転のリスク」である。だがOECDの国際的な最低法人税制度に合わせて設計すれば、税逃れを防ぎつつ公平な競争環境を維持できる。

6. 政策オプションと私の提案

ロボット課税を有効に機能させるには、単に税を新設するのではなく、既存制度を組み合わせて「技術と雇用が共存する構造」をつくることが重要である。筆者は次の三段階からなる社会循環型課税モデルを提案する。

  1. 課税の対象を「ロボット導入による超過利益」に限定し、税率を2%程度に設定する。
  2. これにより企業の投資意欲を損なわず、同時に社会への再分配を実現する。
  3. 税収の使途を明確化し、リスキリングと地域雇用支援に限定する。
  4. 特に自動化の影響を受けやすい職種に対し、再教育や職業転換を支援する基金を設ける。
  5. 中小企業に対しては減税または即時償却を導入し、格差拡大を防ぐ。
  6. 技術導入が遅れる企業へのインセンティブを維持することで、社会全体の生産性向上につなげる。

この方式は、課税を「罰則」ではなく「技術の恩恵を共有するための仕組み」として設計する点に特徴がある。自動化の利益を社会へ循環させることで、雇用の移行期に生じる不公平を緩和できるだろう。

7. 結論

ロボット課税を重税として導入すれば、技術発展を阻害する危険がある。しかし、軽い税率・限定的な期間・明確な使途を条件とするならば、ロボット課税は社会の安定を支える合理的な政策になり得る。

 自動化が進む未来において求められるのは、技術と人間の「共存」を制度的に支えることだ。よって筆者は、条件付きでロボット課税に賛成する立場を取る。

参考文献

Abbott, R., & Bogenschneider, B. (2018). Should robots pay taxes: Tax policy in the age of automation. Harv. L. & Pol’y Rev.12, 145.

Acemoglu, D., Manera, A., & Restrepo, P. (2020). Does the US tax code favor automation? (No. w27052). National Bureau of Economic Research.

Broecke, S. (2023). Artificial intelligence and the labour market: Introduction. OECD Employment Outlook, 93.

Hötte, K., Theodorakopoulos, A., & Koutroumpis, P. (2024). Automation and taxation. Oxford Economic Papers76(4), 945-969.

PwC. (2018). Will robots really steal our jobs? An international analysis of the potential long term impact of automation. PricewaterhouseCoopers.

OECD. (2021). What happened to jobs at high risk of automation?.

AI国力

米中の技術覇権競争の下で、米国は最先端AIチップやEDAソフトの対中輸出を禁じ、算力サプライを絞る戦略を進めている。他方の中国は外圧を逆手に取り、国産化と技術自立を加速させ、AIを「新質生産力」として不動産依存からの構造転換を図っている。

China Daily(2025年9月12日)は、「AI Plus」構想が社会のあらゆる分野に浸透しつつあると報じ、製造、エネルギー、金融、教育、行政などでAI活用が広がっていることを指摘した。この動きは単なる技術導入ではなく、AIを経済発展の中核に据える構造的転換である。

企業面では、Huaweiの AIチップ、Baiduの文心、Alibabaの通義千問、DeepSeekなどが自前チップと大規模モデルを統合開発し、独自エコシステムを形成している。これにより中国は製造業の高度化、鉱山やエネルギーの自動化、医療・教育・行政の最適化など、実体経済と結びついたAI応用を急速に拡大させている。また、西部地域の電力資源を活用する「東数西算」政策によって、電力と計算力を統合的に整備し、AIインフラを国家レベルで拡充している。

一方、米国はAI研究とモデル開発の先頭を走るものの、その基盤拡張は複数の構造的制約に直面している。Deloitte(2025年6月24日)は、AI経済の急拡大に対して電力供給、データセンター容量、サプライチェーンの整備が追いついておらず、米国のAIインフラが需要に対応できないと分析している。さらにReuters(2025年4月23日)は、トランプ政権が再び導入した高関税政策と対中技術摩擦の激化により、レアアースや半導体の供給が不安定化し、AI関連サプライチェーン全体が混乱していると報じた。製造業の空洞化によりAI技術を実際に活用できる産業現場が限られ、算力需要が伸び悩む構造的問題も顕在化している。AI関連株価が急騰する一方で、インフラと実需が追いつかず、電力供給の遅れやコスト上昇がAI経済の持続性を脅かしている。

総じて、中国は「モデル・データ・計算力・エネルギー・応用場面」を有機的に結合させ、実体経済と連動したAI成長モデルを確立しつつあるのに対し、米国はエネルギー供給と製造基盤の脆弱性により、AI拡張に構造的制約を抱えている。今後の競争の焦点は技術そのものではなく、それを支えるインフラ・産業体系・国際供給網の総合的整備力に移りつつある。

参考文献

China Daily. (2025). AI Plus conducive to driving industrial upgrading. https://global.chinadaily.com.cn/a/202509/12/WS68c35ddaa3108622abca0543.html. (cited 2025-10-11).

Deloitte. (2025). Can US infrastructure keep up with the AI economy. https://www.deloitte.com/us/en/insights/industry/power-and-utilities/data-center-infrastructure-artificial-intelligence.html. (cited 2025-10-11).

Reuters. (2025). AI boom under threat from tariffs, global economic turmoil. https://www.reuters.com/technology/artificial-intelligence/ai-boom-under-threat-tariffs-global-economic-turmoil-2025-04-23/. (cited 2025-10-11).