外交青書2025のワードクラウド

「国際秩序」「国際社会」「グローバル・サウス」「相互依存」「分断」「侵略」などが目立ち、世界のルールや秩序が揺らぎ、国際関係が複雑になっていることがわかる。ロシアのウクライナ侵略や中東の不安定化を背景に、国際社会が「法に基づく秩序を守ること」が重要だと繰り返し語られている。「相互依存」「地球規模課題」という単語からは、経済や技術が安全保障と結びつき、気候変動やAIなど国境を越える問題に協力して取り組む必要性も見えてくる。また「グローバル・サウス」「G7」などの単語から、先進国と新興国の間で利害が複雑化し、より多くの国を巻き込んだ協力が求められる時代であることがわかる。

図解課題

働きすぎ(長時間労働)社会の因果構造

【解説】
この図は「働きすぎ社会」の悪循環構造を表している。長時間労働が疲労を招き、生産性を下げ、結果的に業績悪化や人手不足を引き起こす。そのしわ寄せがさらに一人あたりの負担を増やし、再び長時間労働に戻るという負のスパイラル。個人の健康や家庭生活も犠牲になり、社会全体の持続性を脅かす構図を描いている。

やる気が出ない日の選択図

【解説】
「やる気が出ない」状態からの2つの選択肢を示した。何もしないと行動量が減り、達成感が得られず、自己肯定感と意欲がさらに低下してしまう。一方で、完璧でなくていいので「小さな行動」を起こすと、達成感や安心感が芽生え、「次の一歩」へつながる前向きな流れが生まれる。やる気は結果であり、動けばついてくるものであることを表している。

ロボットに税金をかけるべき?―AI時代の社会を考える―

「ロボット税」って聞いたことがありますか?名前だけ聞くと、ロボットが財布を持って税務署に並んでいる姿を想像してしまいますよね。でも、もちろんそんなことはありません。ロボット税とは、企業がロボットやAIを使って仕事を自動化したとき、そのロボットに税金をかけるという考え方です。なぜそんなことをするのでしょうか?

なぜロボット税が必要だと言われるの?

理由は大きく二つあります。一つ目は、ロボットが人間の仕事を奪うことで失業が増え、所得税や社会保険料など、人の働きにかかる税金が減ってしまうことです。税収が減ると、国の財政や社会保障に影響します。二つ目は、今の税制が人間の労働には重く、機械には軽い仕組みになっていることです。このままでは企業がロボットを導入するほど税負担が軽くなり、不公平が広がります。

「じゃあロボットに税金をかければいいじゃん!」と思うかもしれません。でも、話はそんなに簡単ではありません。

ロボット税の難しさ

まず、「ロボットって何?」という定義の問題があります。工場の産業用ロボットはわかりやすいですが、AIソフトや家庭用ロボットはどうでしょう?スマホの中のAIもロボットと呼べるのでしょうか?定義があいまいだと、課税のルールを作るのはとても難しいのです。

さらに、日本だけがロボット税を導入したらどうなるでしょう?企業は税金のかからない国に工場を移してしまうかもしれません。そうなると、日本の産業は弱くなり、雇用も減ります。RIETI(独立行政法人経済産業研究所)の研究では「国際協調がなければ、ロボット税は逆効果になる」と指摘されています。

日本の事情とロボット依存

日本は世界有数のロボット生産国であり、特に自動車産業でロボットの利用が進んでいます。ロボット税を導入すれば、競争力にブレーキをかけるリスクがあります。

ここで、世界の産業用ロボットの導入状況を見てみましょう。

図1:世界の産業用ロボット販売台数(産業別)


図1 世界の産業用ロボット販売台数。自動車産業が突出していることがわかる。
自動車産業が最大の導入先であることを示す(出典:IFR、RIETIコラム)

この図から、自動車産業がロボット導入の中心であることがわかります。つまり、日本がロボット税を導入すれば、自動車産業に大きな影響が出る可能性があるということです。

AI課税という新しい議論

最近では、ロボット税だけでなく「AI課税」も議論されています。生成AI(ChatGPTなど)が税務やビジネスに大きな影響を与えるため、AIそのものに課税する案も出ています。しかし、AIは国境を越えて使われるので、国際的なルールがないと課税を回避されやすいのです。さらに、AIを使うことで税務行政が効率化する一方、プライバシーやデータ管理の問題もあります。

キミたちにとっての意味

この話は遠い未来のことではありません。AIやロボットは、これからの働き方に大きな影響を与えます。大事なのは「機械が得意なこと」と「人間だからできること」を見極め、リスキリング(学び直し)で新しいスキルを身につけることです。税金の仕組みも、技術の進化に合わせて変わっていくでしょう。

ちょっと考えてみよう

もしロボット税が導入されたら、ロボットが「え、僕たち働いてるだけなのに…」と文句を言う未来が来るかもしれません。そんなSFみたいな世界を笑っていられるのは今のうちです。技術は私たちの生活を便利にする一方で、社会のルールを変える力も持っています。だからこそ、税金の話は退屈そうに見えて、実は未来の暮らし方に直結するテーマなのです。

そして、もう一歩踏み込んで考えてみましょう。ロボット税で集めたお金を、失業した人の再教育や新しい仕事づくりに使うことができたらどうでしょう?「ロボットに奪われた仕事を、ロボットが払った税金で取り戻す」なんて、ちょっと面白い仕組みですよね。未来の社会は、こうしたアイデア次第でずいぶん変わるはずです。

結論

ロボット税は簡単な解決策ではありませんが、技術と人間の共存を考えるきっかけになります。課税だけでなく、教育や国際協調を含む総合的な政策が必要です。未来の社会をどう設計するかは、今の私たちの選択にかかっています。


<参考文献>

渡辺徹也『生成AIと課税 ―ロボット課税からAI利用へ―』財務省、2024年。https://www.jstage.jst.go.jp/article/prifr/157/0/157_32/_pdf/-char/ja

岩本晃一『AI・ロボット税は経済の救世者か、それとも破壊者か?』RIETIコラム、2023年。https://www.rieti.go.jp/users/iwamoto-koichi/serial/124.html

日本のAI国力と人材育成の課題

 AIは、もはや未来の技術ではない。社会の隅々に浸透し、政策、産業、教育、そして日常生活にまで影響を及ぼす存在となった。だが、その進化のスピードに、日本の人材育成は追いついているだろうか。

 大和総研が2024年7月に発表したレポート『不足するAI人材の育成は間に合うのか』は、警鐘を鳴らす。2030年には最大12.4万人のAI人材が不足する可能性があるという。AI人材とは、単にプログラムを扱える技術者ではない。AIの構造を理解し、社会実装に向けた設計・運用・倫理的判断まで担える、総合的な知見を持つ人材である。こうした人材の育成には、時間も資源もかかる。教育機関のカリキュラム、企業の研修制度、そして社会全体の理解と支援が不可欠である。

 一方、総務省『令和6年版 情報通信白書』は、生成AIの急速な普及に伴うリスクを明示する。生成AIは、創造性と効率性を飛躍的に高める一方で、事実に基づかない誤情報を生成する「ハルシネーション」、偽画像・偽動画を作成する「ディープフェイク」、個人情報の漏えい、著作権侵害など、複雑かつ深刻な課題を孕んでいる。

 これらのリスクに対処するには、技術的スキルだけでは不十分である。法制度、倫理、情報セキュリティに通じた多分野の知識を持つ人材が必要であり、AI人材の定義そのものが高度化している。つまり、AI人材の育成は、単なる技術教育ではなく、社会全体の構造的な対応が求められるフェーズに入っている。

 海外に目を向ければ、米国では主要AI企業が政府と連携し、安全性確保に向けた自主的な取り組みを進めている。EUでは「AI法」や「デジタルサービス法」によって、企業にリスク評価と対策の実施を義務づける法的枠組みが整備されている。これに対し、日本は国産LLMの開発やフェイク対策技術の研究において一定の成果を挙げているものの、制度整備や人材育成の面では依然として課題が残る。

 AI国力とは、技術力だけでなく、それを支える人材と制度の総合力である。日本が生成AIを含むAI技術の恩恵を最大限に享受し、国際競争力を維持・強化するためには、教育、産業界、政府が連携し、AI人材の育成を加速させる必要がある。特に、生成AIの活用においては、誤情報や偏見の拡散を防ぐための倫理的判断力を備えた人材の育成が急務であり、社会全体でAIの適切な利活用を支える基盤づくりが求められる。(996文字)

<参考文献>

田邉 美穂(2024年7月11日)『不足するAI人材の育成は間に合うのか 日本におけるAI 人材育成の取り組みとその課題』株式会社大和総研 経済調査部https://www.dir.co.jp/report/research/economics/japan/20240711_024496.pdf

総務省(2024)『令和6年版 情報通信白書 第Ⅰ部 第4章 第1節「AIの進化に伴う課題と現状の取組」』https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r06/pdf/n1410000.pdf